『東京改造計画』はホリエモンこと堀江貴文氏が「東京を良い都市にするための方法」を、提唱する内容の書籍だ。
本書のリリースが発表された前後では、「東京都知事選挙にホリエモン出馬か!?」と話題沸騰(最終的にはホリエモンは出馬しなかった)。
本書でタッグを組むカリスマ編集者の箕輪厚介氏が女性ライター問題で炎上し、さらに注目を集めた。
箕輪氏のことはさておき、都政が混乱しているこのタイミングでこの本を出してくれるホリエモンはさすがであり、内容は非常にダイナミックで面白く、ワクワクするものだ。
案の定、目次だけを見て「暴論だ!」と叩くネット民をTwitterで見たが、叩く前に、一度本書を読んでみて欲しい。
個人的に「これは賛成できないな」と思った計画もあったが、その場合でも、「〇〇だから反対だ」と考える自分のスタンスを見つめなおすことで、都民の一人としての自分の意思を確認できた。
ホリエモンも本書でこう言っている。
これは暴論だと炎上するだろう。
しかし、ここで伝えたいことは常識を一回疑ってゼロベースで議論してみようということだ。僕はそのための過激なお題を投げかける。
すべての進化はそこからしか生まれない。
東京改造計画 P105
都民一人一人が是々非々で議論して欲しいというのがホリエモンの願いではないのかと思う。
全員が、「自分ごととして」東京の未来を考えるためにこの本はあると思う。将来を担う、U-45の都民にとって、本書は必読の書だと感じた。
「東京改造計画」は既成概念をぶっ壊してくれる本だ
「東京改造計画」を一言で言うと、凝り固まった既成概念をぶっ壊して、新しい世界をリアルに想像させてくれる本だ。
それは、この本の表紙からわかる。

この表紙のホリエモンの写真を撮影したのは写真家の蜷川実花さん。
確かに蜷川さんらしい色彩のかっこいい写真だが、なんとこの写真は遠隔からZoomのスクリーンショット機能で撮影されたらしい(!!)
実はこの本の表紙写真もカメラマンで映画監督の蜷川実花さんが「Zoom」で撮影してくれた。一切会うことなくパソコンの画面に映る僕をスクリーンショットで撮ってくれたのだ。
東京改造計画 P140
私は日頃からテレワークで仕事をしているので、自分のテレワークへの理解は柔軟だと思っていた。
それでも、書籍のカバー写真はスタジオでカメラマンがカメラを構えて撮るのがあたり前だと、当然のように考えていた。
「私は新しい考え方にも比較的柔軟だ」と思っていた私こそ、既成概念で凝り固まっていたのだ。
ホリエモンは東京を愛している
本書を読み始めてすぐに「ホリエモンは東京を愛しているんだな」と感じた。
ホリエモンくらい金と人気と人脈があれば、正直東京がどうなろうが遊んで暮らせるだろう。
東京を改造しなくても、自分だけ暮らしやすい海外に移住したり、東京の中でも特権的にいい暮らしをすることも可能だ。
だけど、彼はそれをしない。
都民に「東京は政治屋の私物じゃない」「東京はすごいポテンシャルがある」「東京は私たちのものだ」と訴えてくれている。
「東京なんてオワコンだよ笑」と嘲笑するのではなく「東京は本当はすごいんだ。だからもっとやれるんだ!」というホリエモン。
本書は、東京を愛している人の意見だからこそ、聞く価値があると私は思う。
東京にはすごいポテンシャルがある。
しかし小池都知事がそれを有効活用できているとは到底思えない。
政治で飯を食っている「政治屋」には無理なのだ。
利害損得を捨て、
東京を作り直さなければいけない。
東京は政治屋のものではなく、わたしたちのものなのだ。
東京改造計画 序章扉ページ
ホリエモンの金持ち至上主義本ではない
ホリエモンはなんでもかんでも平等にすればいいという「悪平等」が嫌いだ。
悪平等批判をすると、「金持ちを優遇しろってことかよ!」と怒る人がよくいるが、これは誤解だ。
ホリエモンは「金持ってる奴からは、たくさん使ってもらって、それを都税にして、都民のために使おうぜ」と言っている。
つまり、東京にいる裕福な人たちのお金を、東京を豊かにする財源にしようとしているのだ。
民間経営だったとしたら会員権が1億であっても完売するような好立地なゴルフ場を、東京都が所有しているらしい。
ただし、現在は都民に平日1万円代の格安料金で貸し出している。
ホリエモンはそれをもったいないという。もっと金持ちに会員権を高く売れと。
百人の金持ちに1億で売れば、100億円のキャッシュができ、それを使って都民の生活を豊かにすればいいというのがホリエモンの主張だ。
この話に限らず、ホリエモンは基本的に金持ち優遇はしない。むしろ、金持ちに使わせて、その金を財源とすることを考えている。
貧乏人からも税金を徴収することばかり考える政治家とは、真逆の考え方だ。
東京をダイナミックに変革する37の改造案
『東京改造計画』では、37つのダイナミックで画期的な改造案が提唱されている。
- 本当の渋滞ゼロ
- ETCゲートをなくす
- パーソナル・モビリティ推進都市に
- 満員電車は高くする
- 切符も改札機もなくす
- 現金使用禁止令
- 東京メトロと都営地下鉄を合併・民営化する
- Uber解禁
- 東京の空が空いている
- 江戸城再建
- VRのインフラを整える
- 足立区は「日本のブルックリン」に生まれ変わる
- 築地・豊洲市場改革案
- 築地市場跡地のブランド化
- オリンピックはリモート競技に
- オンライン授業推進
- 紙の教科書廃止
- 学校解体で子どもの才能を開放する
- 「正解」を教えない教育
- 大麻解禁
- 低容量ピルで女性の働き方改革
- 健康寿命世界一
- 「ジジ活」「ババ活」で出会い応援
- 東京のダイバーシティ
- ストップ・インフォデミック
- 経済活動を再開せよ
- 今こそネット選挙を導入せよ
- QRコードで投票できる
- 記者会見なんてオンラインで開けばいい
- 都職員の9割テレワーク化
- 都職員の英語公用語化
- 東京都のオール民営化
- 「妖精さん」のリストラ計画
- 遊び場を増やす
- 限りなく生活コストを下げる
- 人生100年時代のコミュニティ
- 都民限定の無料オンラインサロン
東京改造計画 目次より
これらの改造案の具体性はバラバラで、かなり具体的に「こうしよう!」と提言しているアイデアから、「こうしたら面白くね?」くらいのふんわりしたアイデアまである。
具体的なアイデアであればあるほど、個人的には面白いと感じた。例えば、「満員電車は高くする」「Uber解禁」などだ。
個人的に支持したいと感じた東京改造計画をいくつか紹介する。
「本当の渋滞ゼロ」「満員電車は高くする」
ホリエモンは、高速道路と通勤電車に「ダイナミック・プライシング(価格変動設定)」を導入すべきだと提唱する。
混雑時は料金が自動的に高くなるように設定すれば、多くの人は料金が高くなる時間帯を避けるようになり、渋滞や満員電車が緩和するという考え方だ。
僕は何も、首都高を走る鞍馬から一日1万円とか1週間5万円を取れと言っているわけではない。そんなことをすれば、東京で車になんて乗れなくなってしまう。
ただ受給に応じて価格を少し変えればいい。
混雑時は400円〜500円、ワンコインにプラスアルファした程度の金額を上乗せするだけで、渋滞はうんと緩和できるのだ。
東京改造計画 31ページ
ダイナミック・プライシングは、ETCで課金すればいいとホリエモンは言う。
「ETCがない車はどうするんだ!」と思うかもしれないが、堀江氏の答えは、「ETCを搭載していない車は、そもそも首都高に入らせない」だ。
「渋滞をなくすにはこれしか方法がないのだ」と言っている。
確かにそうだが、これを言える政治家は絶対にいないだろう。
それでも「庶民にとっては1000円、2000円の違いも死活問題だ。ホリエモンは金持ちだけスイスイ車で走ればいいと言うのか」と文句を言うクレーマーに僕は問いかけたい。
「君たちはそんなに渋滞が好きなのか」と。
これだけライフスタイルが多様化し、テレワークなどが推進される世の中に置いて、わざわざ同じ時間帯に同じように移動する必要なんてない。
東京改造計画 31ページ
ちなみに、ホリエモンがここで言っているETCは、現在料金所に設置されている旧式のETCゲートのことではない。詳しくは、本書を読んで欲しい。
「現金使用禁止令」
東京都では、キャッシュレス化をより一層推進したい。原則キャッシュレス決済でなければ、飲食店に営業許可を出さなくてもいいくらいだ。
東京改造計画 P48
私もずっと前からキャッシュレス前面賛成派だったが、新型コロナの一件でさらにこの気持ちが強まった。
キャッシュレス化していない飲食店には正直入るのを躊躇してしまうレベルだ。
何十人、何百人という人間が触った硬貨やお札は、はっきり言ってかなり汚い。手垢がベッタリくっつき、ワケのわからないウイルスだらけだと覚悟したほうがいい。
東京改造計画 P49
ホリエモンが言うように、「現金は不潔だ」と人々が気づいたこのタイミングで東京都は思い切ってキャッシュレス化を一気に普及させて欲しい。
「Uber解禁」
東京はライドシェアを規制緩和するべきだ。
現在の東京都心では、国土交通省がガチガチに規制をかけている生でライドシェアが解禁されていない。
東京改造計画 P55
田舎ではタクシー会社がどんどん衰退してタクシー空白地帯が生まれていて、田舎にいけば行くほどに、国内の観光客やインバウンド向けのタクシーが足りない。
だから、全国に先駆けて東京でライドシェア解禁すべきだとホリエモンは言う。
東京がライドシェア特区になれば、移動が格段に便利になる。民間にあるリソース(資源)を使えば、タクシーより安い価格でライドシェアできる。
サラリーマンが週末にUberドライバーとしてアルバイトすることもできる。
東京改造計画 P57
全国に先駆けて東京でライドシェアを自由化することで、運用範囲が広がり、国内にライドシェアが広まれば、いいことずくめだ。
サラリーマンの終身雇用が壊れ、副業ブームの今にUber解禁はぴったりだし、何より価格競争がおきて、安い値段でタクシーに乗れたり、深夜や早朝にもUberを呼べるようになったら非常にありがたい。
「タクシー業界が困るだろ!」と言う意見もわかるが、既得権益をずっと守って発展しない経済に意味はあるのだろうか。
とはいえ、タクシーは裕福層からは重宝されて、むしろ利益率が上がる気もする。
タクシーの運転手さんたちは、もしタクシーの仕事が少なくなったらUberでアカウントを作ればいい。
一般のドライバーよりも評価の高い、優秀なドライバーとして重宝されると私は思う。
『足立区は「日本のブルックリン」に生まれ変わる』
東京23区の中でも、一際イメージの悪い足立区をブルックリンのような、家賃が安くていけてる町に変化させようという計画だ。
足立区を知っているものとしては「そんなの無理だろ」と思ってしまったが、ホリエモンは大阪堀江や代官山の具体例を出して「なんの変哲もない街も、プロデュースによってイメージを変更できる」と言う。
足立区を創作のアトリエとしてもらう。
足立区からコンテンポラリー・アートを発信してもらうのだ。
そうすれば、足立区はニューヨークのブルックリンのようにカッコ良くてイケてる街になる。
東京改造計画 P68
東京のイケてる街代表の代官山が、一人のプロデューサーのおかげでお洒落な街になった経緯も書いてある。
このエピソードも面白いので、気になる方は本書で確認して欲しい。
「オンライン授業推進」「学校解体で子どもの才能を解放する」
ホリエモンは強めのオンライン推進論者なので、もちろん教育もオンライン化だ。
私は学校については少し懐疑的で、学力格差の広がりを心配していた。
ホリエモンくらい優秀な人なら、「できない子は放っておけばいい」と言いそうというイメージがあるかもしれないが、そうではなかった。
偏差値50以上の優秀な生徒は、この方式で教育課程のカリキュラムを余裕でこなせるだろう。
では、現場の先生は何の仕事をするのか。
授業についていけない偏差値50未満の子供たちをターゲットに、チューター(個人指導の教師)として推進サポートするのだ。
東京改造計画 P89
放って置いてもデキる子どもは、オンライン授業でどんどん自習を進めてもらう。
デキない子どもには、チューターがオンラインとオフラインで個別に面倒を見る。
こういう体制を組めば、教育全体の底上げになる。
東京改造計画 P94
また、オンライン授業にすれば、わかりやすい先生の授業を動画で皆がシェアできるという点も学力の向上に繋がると思った。
特に公立の学校での先生ガチャはなかなかシビアだ。
私も学生時代に、説明がわかりにくい先生に担当が変わって、急に勉強についていけなくなることがあった。
優秀な先生の授業を日本中の生徒がシェアできれば、日本の学力向上に繋がるだろう。
ホリエモンはオンライン授業も導入できない日本の教育現場に向けて、かなり厳し目に警告している。
授業のオンライン化もできない学校に、教わることはそもそもない。
東京改造計画 P87
辛辣すぎて少し笑ってしまった。教育関係の人たち、頑張ってください。
結論:東京都知事選挙前の今こそ、「東京改造計画」を読もう
来たる2020年7月2日に、東京都知事選挙が行われます。
東京都の未来を考えるこのタイミングだからこそ、未来を担う都民それぞれがこの本を読んで、東京のことを当事者意識を持って考えてみるといいなと思いました。
(2023/03/29 21:45:25時点 Amazon調べ-詳細)